2025年3月21日金曜日

研究と編集

 2018年12月に研究誌『戦争と萬葉集』を刊行するあたりから、本格的に編集の仕事する機会が増えています。以下のような本が、私が編集を担当したものです。

・青山学院大学文学部日本文学科編『留学生のための日本文学入門』(元版の私家版、2017年。のちに和泉書院、2021年)、

・同『文学交流入門』(武蔵野書院、2023年)

・プロジェクト「青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち―交流の歴史とその未来のために―」編集・発行『青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち』(2024年)

・青山学院大学文学部日本文学科・復旦大学外国語言文学学院日語語言文学系主催国際シンポジウム「日本文学の翻訳・翻案・アダプテーション―中国からの視点―」に基づく論集(2025年刊行予定)

こうした編集の最初の出発点は、『国文学』の特集「万葉集―その編集作業と多声性」(第49巻第8号、2004年7月)について、學燈社の編集者から助言を求められたことであったように思います。そして、編集を強く意識したのは、『国文学』の臨時増刊号「文字のちから―写本・デザイン・かな・漢字・修復―」(第52巻第10号、2007年8月)であったと思います。學燈社の編集者から、今度の臨時増刊号は「文字」で行きたい、とテーマを提示され、構想と執筆者の探索を依頼されました。責任の重さに押しつぶされそうになって、帰路の足取りが重かったことを今も覚えています。

とはいえ、『国文学』のこのふたつの特集から、その道の専門家に執筆を依頼し、その文章を読むことの楽しさを覚えました。依頼は自分が面識のある人に限りません。本や論文を読み、ぜひこの人にと思う人には、可能な限り手を尽くしてコンタクトをとりました。「文字のちから」は、日本古代から近代まで、文学だけでなく写経や筆記具、地域に西洋・中国にも及びます。編集者を通じて、執筆の内諾が伝えられると、本当に嬉しく、心躍りましたました。今でも執筆者の多くは、私が依頼主であったことに気づいていないようです。

研究を進めてゆくと、時代・領域・分野を超えて、知りたいことがどんどん広がってゆきます。しかし、自分一人の力ではそのすべてをカバーすることは不可能です。そこで、その時代・領域・分野の専門家に教えてもらう、というのが、私の編集の基本です。それはまた、私の編集の原動力となっています。

ただし、その時代・領域・分野について、自分が全く知らずに依頼することはありません。自分もある程度の知識を身に付け、また、自分の萬葉集研究・日本文学研究との関わり方を考えます。何よりも、自分が本当に知りたいことは何かを明確にしておくことが大切と思っています。ですから、その道の専門家に「丸投げ」するということはしません。

と言うと、自分が鵜飼の「鵜匠」で、執筆者は「鵜」のようです。確かにそういう面はあるかもしれません。しかし、私の場合、「鵜匠」は、あくまでも「鵜」に教えを乞う存在です。

自分の知りたいことを専門家に書いてもらい、その教えを受ける、という編集も、今後研究を広げてゆくための一つの重要な方法であると思います。そして、編集をいわば「口実」に、これまで面識のなかった研究者との交流の輪が広がることは、何物にも代えがたいことです。